店舗物件を借りる際、「以前も店舗として使われていたから大丈夫」「書類に『店舗』と記載されているから問題ない」と考えてしまうことがあります。
しかし、実際には、契約後に建物の用途について追加の確認が必要となるケースもあります。
今回は、実際の店舗物件でそのような確認が必要となった事例をもとに、店舗を借りる前に確認しておきたい「建物の用途」についてご紹介します。
※本記事は実際の事例をもとに、物件や関係者が特定されないよう内容を一部一般化・編集しています。
「店舗・事務所」と書いてあるのに、2階を店舗として使えない?
築年数の経過した2階建ての物件で、物販店舗として1階・2階使用を希望するテナント様がいらっしゃいました。
この物件は、過去に1・2階で物販店舗として使用されていた実績がありました。
また、台帳記載事項証明書や登記簿謄本を確認すると、建物の主要用途には「店舗・事務所」と記載されていました。
そのため、一見すると、
「1階・2階とも店舗として使用できるのでは?」
と思ってしまいます。
ところが、消防署が確認したところ、2階部分については、そのまま物販店舗として使用することについて確認が必要な状況であることが分かりました。
消防署に保管されていた竣工図を確認すると、2階の用途が「事務所」とされていたためです。
一方、役所側で把握している資料上では、1階・2階の用途を細かく区分した情報までは確認できず、過去の使用状況やほかに資料がある場合はそちらも含めて判断する必要がある状況でした。
つまり、
「登記簿や台帳に『店舗』と記載されている」
=「建物のすべての階を、現在希望する形で店舗として使用できる」
とは限らないのです。
なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?
築年数の経過した建物では、現在残っている資料と建築当時の図面などの資料が一致しないことがあります。
例えば、
- 登記簿には「店舗・事務所」としか記載されていない
- 台帳記載事項証明書にも詳細な階別用途までは記載されていない
- 建築当時の竣工図には階ごとの用途が記載されている
- 過去には実際に店舗として使用されていた
- しかし、現在希望する使用方法については別途確認が必要
といったケースです。
特に注意したいのが、
「以前、店舗として使っていた」ことと、「今回も同じ条件で店舗として使える」ことは、必ずしも同じではない
という点です。
建築基準法上の用途や、消防法上の用途区分によって、必要となる確認事項や設備が変わる場合があります。
「用途変更」と聞いたら、すぐに工事費を考えるのはまだ早い
ここで注意したいのが、「用途変更」という言葉です。
用途を変更する場合でも、すべてのケースで同じ手続きが必要になるわけではありません。
例えば、建築基準法では、特殊建築物への用途変更について、規模などによって建築確認申請が必要となる場合があります。
一方で、建築確認申請が不要だからといって、建築基準法への適合が不要になるわけではありません。
そのため、
「200㎡以下だから何もしなくていい」
※建築基準法第87条では、一定の特殊建築物への用途変更について、用途変更部分の床面積が200㎡を超える場合に確認申請が必要となります
「確認申請が必要ないから、そのまま営業できる」
と単純に判断するのは危険です。
実際の物件については、建物の規模・構造・現在の用途・変更後の用途・工事内容などを踏まえて、建築士や行政窓口などへの確認が必要になります。
古い物件ほど「契約前の確認」が重要
築年数の経過した物件では、
「昔から店舗として使っていたから大丈夫」
という判断だけで進めるのではなく、契約や内装工事を始める前に、できるだけ資料を確認することが重要です。
特に確認しておきたいのは、
① 建物の現在の用途
登記簿だけではなく、確認できる行政資料なども含めて確認します。
② 各階の用途
「店舗・事務所」とだけ記載されていても、実際にどの階がどの用途として扱われているのか確認が必要になる場合があります。
③ 建築当時の図面
確認済証や検査済証、竣工図などが残っている場合は、重要な確認資料になります。
④ 消防関係
店舗として使用することで、消防用設備や届出などについて確認が必要になる場合があります。
消防法では、建物の用途などに応じて必要な消防用設備等が定められています。
⑤ 用途変更に伴う工事の有無
用途を変更する場合、場合によっては消防設備、避難関係、内装などについて追加の対応が必要になることがあります。
そのため、「物件を借りてから確認する」のではなく、「借りる前に確認する」ことが非常に大切です。
「営業できると思っていたのに……」を防ぐために
店舗物件では、物件そのものの広さや賃料だけでなく、
「希望する業種で、本当にその建物を使用できるのか」
という視点が非常に重要です。
特に、
- 2階以上を店舗として使用したい
- 飲食店を開業したい
- 不特定多数のお客様が出入りする
- 特殊な設備を設置する
- 大規模な内装工事を予定している
- 築年数がかなり経過している
といった場合には、契約前の確認をおすすめします。
せっかく気に入った物件を見つけても、契約後に「予定していた営業ができない」「追加工事が必要になった」と分かってしまうと、時間も費用も大きく変わってしまいます。
店舗物件は「借りられるか」だけでなく「使えるか」まで確認する
店舗物件探しでは、
「賃料はいくらか」
「立地は良いか」
「広さは十分か」
という条件ももちろん大切です。
しかし、それと同じくらい、
「希望する営業形態で、その物件を実際に使用できるか」
を確認することが大切です。
特に築年数の経過した物件では、昔の図面や行政資料などを確認することで、思わぬ事実が分かることがあります。
店舗物件をご紹介する際には、単に物件をご紹介するだけではなく、お客様が「契約した後に困らないこと」もしながら、確認すべきポイントを一緒に整理していきたいと考えていきます。
「この物件で希望する業種を営業できるのかな?」
「2階も店舗として使いたいけれど大丈夫?」
「用途変更や消防関係が気になる」
そんな場合は、ぜひ一度ご相談ください。
店舗に関するご相談・お問い合わせ
株式会社彩天堂では、店舗を「借りたい方」「貸したい方」それぞれのご相談を承っています。

コメント
コメント一覧 (1件)
[…] […]